夢のようなこの世

舞台床に埋め込まれた水族館さながらの巨大水槽は、役者が現れては消える空気のない空間だ。圧倒的な仕掛けが施された舞台と最前列の間隔は非常に狭く、絶対濡れると分かっているのにわざとそこに座る。濡れる体験を求めている人が大半だと思う。しかしそんな彼らがしぶきを避けようと身構える瞬間は、劇場全体に不思議な期待感を引き起こす。瞬間が生まれる瞬間を意図した日々未完成の芝居。http://kikuno-mure.hatenablog.com/entry/2017/09/17/004829

ドヤ街に聳え立つ “るなぱあく” には既に溺死量の水が隠されているというのに、また雨が降り注いで、どちらが芝居仕掛けなのか分からない。昨日とまた台詞が違った。吹き出す水が数倍増えていたような。限界まですし詰めにされた客たちは肩を縮めて目を凝らす。人肌と芝居で熱くなり、雨と水で冷え、彼らの身体もまた役者のように大忙しだろう。

楽日のカーテンコールで、劇場スタッフにもライトが当たった。夢のようなこの世にいた私はつい我は役者と勘違いして満面の笑みを浮かべてしまった。この2日間何度も頭をよぎった舞台を羨む感情も、この世のような夢が見せた芝居の一部なのかもしれない。